「分かりやすさ」と「技術的成長」のトレードオフ

悩むトリケラトプス

他人に分析を説明しようとなると複雑な分析はできないけど、技術的成長しようと思うと新しい手法にもチャレンジしたいな、、


この記事では、こんな悩みに答えていきたい。


私自身データアナリストをやっていて、上記の悩みを抱えながら仕事をしている。価値のある分析をしたいけど、個人的に成長もしたいという人の参考になればと思って書いている。


「他人への説明力」と「個人の技術的成長」のトレードオフ


先日こんなツイートをした。

データサイエンス系のコンサルをやっていて辛いところは、分からない人に分かるようにアウトプットを作る必要があること。

個人の技術的成長と、他人への説明力がある種のトレードオフになっていて、技術的成長にブレーキがかかる感じがある。


今回はこのツイートについて、書いていこうと思っている。

コンサルだけの問題ではない


ひとつ断っておかなければいけないこととしては、これはコンサルに限った話ではないということ。

2021年現在ではまだデータの民主化が進んでいるとは言い難い。データ分析をしている人にとっては、データ分析について知らない人に分析結果の説明をする必要がある場合が多いと思う。

したがって、特にコンサルという立場に限ったことではなく、「他人への説明力」と「個人の技術的成長」のトレードオフは随所にあると思っている。



高度な分析は非アナリストに伝わりにくい


まず一方の側面は、高度な分析は非アナリストに伝わりにくいということである。

これは多くの人が実感として持っているのではないかと思う。しかし、データアナリストという職に就いている人は、技術的に高度な分析をしたいと考えている人が多く、伝わりにくい分析をしてしまうことが散見される。


この状態を図にすると、以下のような状態である。


上記のように、アナリストのデータリテラシーが高い状態で分析を行っていると、非アナリストに理解できない分析が誕生してしまうことになる。


伝わりやすい分析はアナリストが成長しにくい


だからといって伝わりやすい分析をすることが正しいのかというと、そう簡単な話でもないと思っている。

このトレードオフのもう一方の側面は、伝わりやすい分析はデータアナリストが技術的に成長しにくいことである。図で表すと以下のような状態である。


上記のように、比較的万人に理解しやすい分析をすると、非アナリストにも理解してもらいやすい。しかし、データアナリストは物足りなさを感じてしまうかもしれない。


他人への説明力が優先


「他人への説明力」と「個人の技術的成長」を天秤にかけた時、圧倒的に優先しなければいけないのは「他人への説明力」の方である。


これはデータ分析をしている目的を考えれば自明と言える。データ分析は常に「何をすべきか」という問いに答えやヒントを与えるものであるべきだ。

したがって、「他人への説明力」の低い分析は、分析依頼者の問いに答えられず、意思決定につながらない。結果として、その分析自体は全くの無意味ということになってしまう。



個人の技術的成長も重要


一方で、「個人の技術的成長」というのは、もう少し長期的な目線で見た時に必要となるものである。

個人の視点で見ると、同じような集計をしていても、データアナリストとしての分析の引き出しが増えず、成長できないとなる。一方、企業の視点で見ると、従業員であるデータアナリストのモチベーションが損なわれ、離職や採用力低下につながりかねない。

上記のように「個人の技術的成長」は重要な観点であると思う。しかし、あくまで優先すべきは短期的成果、つまり「他人への説明力」が高い分析をするということであると私は考えている。


トレードオフ解消のための二つの方向性


したがって、「他人への説明力」を維持しつつ、「個人の技術的成長」も果たせるようにするためにどうすればいいのか、というのが次の論点となる。



私が考える方向性としては、以下の二つがある。

  1. 非アナリストのデータリテラシーを高める
  2. プロダクトという形で分析を提供する

以下で順に解説していく。


非アナリストのデータリテラシーを高める


ひとつ目の方向性は、非アナリストである分析依頼者側のデータリテラシーを高めることで、データアナリストとの理解度ギャップを埋めていくという方向性である。



非アナリストのデータリテラシーを高めていくことで、データ分析の分かりやすさを相手に合わせる必要性も低下していく。

機械学習であっても、比較的概念が簡単な以下のようなものであれば、非アナリストのリテラシーを上げることで、納得感を持って話を聞いてもらえるようになると思っている。

  • 重回帰分析
  • クラスタリング
  • 決定木分析
  • 傾向スコアマッチング

上記のような手法である。

BIツールで基礎集計を省く


また、BIツールの導入もこの方向性にあると言える。

分析依頼者側がデータについて何も情報を持っていない状況の場合、データアナリストに依頼される分析も低レベルなものになってしまう。

しかし、BIツールを定期的に見るような文化が根付いている場合、基本的な集計やKPIに関してはデータアナリストに依頼する必要がなく、専門性の求められるような高度な分析がデータアナリストに回ってくるようになる。

「BIツールがあればデータアナリストは不要」ということではなく、データアナリストがより高度な分析に集中できるようになるものだと考えている。




プロダクトという形で分析を提供する


二つ目の方向性は、プロダクトという形で分析を提供するという方向性である。ここでいうプロダクトというのは、例えば以下のようなものが考えられる。

  • 今後数日間の売上を予測するモデル
  • 特徴量に応じて売上を予測するモデル

上記のようなものが該当する。

ここでは売上予測について例を挙げたが、それぞれの状況に応じて様々なプロダクト化が考えられるのではないかと思う。

分析をブラックボックス化する


このように、分析をプロダクトという形で分析依頼者に提供することにより、中身がブラックボックスであっても許されることがある。勿論、予測結果の精度が高く、利用者側がメリットを感じていることが前提にはなる。


分析のブラックボックス化を行うことで、データアナリストと分析依頼者の理解度ギャップを乗り越えることが可能になる。

結果として、データアナリストは高度な予測モデル作成に取り組むことができ、分析依頼者は使いやすいUIで予測結果を得ることが出来るようになるという訳である。

これもまた「他人への説明力」と「個人の技術的成長」のトレードオフを、理想的に解決することができる方向性といえる。


難易度はかなり高い


上記は理想的な方向性について話したが、実際に分析依頼者が活用できる予測モデルを作ることはかなり難しい。

さらに言えば、定期的に予測モデルのメンテナンスを行う必要があり、それに見合うROIが得られるかという問題もある。



まとめ


今回は、「他人への説明力」と「個人の技術的成長」のトレードオフ問題について、

  1. 非アナリストのデータリテラシーを高める
  2. プロダクトという形で分析を提供する

という二つの方向性があるのではないかという話をした。


価値のある分析をしたいし、個人的に成長もしたいという人の参考になれば幸いである。

ではこのへんで。